熱意のある透析医療
透析医療には熱意が必要です。医者が、「絶対に良くしてみせる。」「このくるしみを取り除いてみせる。」「なんとかして治そう。」という心構えを持っていないと本当の良い透析医療はできません。透析療法が急性腎不全の治療として登場して60年。慢性腎不全の治療として使われ出して50年近くたちました。透析療法は少しずつ改善され、新たな治療薬、性能の良いダイアライザー、使いやすく壊れにくい透析装置の登場で、治療法として確立し安全な、身近なものになりました。しかし、腎不全という病気そのものが良くなったわけでもなんでもなく、現在でもやはり患者さんは最低週3回約4時間の透析療法を受けなくてはなりません。また、長期間透析をされてきた患者さんには独特の病態があらわれたり、日本の現在の高齢化社会に伴って高齢の透析患者さんが増えたり、糖尿病の最終的な状態として腎不全に至るかたが増えたりしています。2007年末時点での日本透析医学会の調査では、新たに透析導入となった患者さんの平均年齢は 66.8歳でした。80 歳代の患者さんが28,989人、90歳以上の患者さんも全国では2629人もおられるのです。高齢の患者さんは、”その年齢まで大病なく無事に生きてこられただけあって頑健である”という一面も持っておられますが、やはり色々な局面で「弱い」という面も否めません。若い人だったら何という問題を起こさずよく効く薬でも副作用がでたりします。透析中に血圧も下がりやすくなります。それでも、最善の治療効果をめざし日々の治療を続けて行くのです。治療には熱意が必要です。たとえばドライウエイトひとつとってもそうです。胸水がたまったり、血圧が高くなって困ったり、心不全の兆候があったり、心臓弁膜症の危険があったりなどドライウエイトを下げなくてはいけない局面は多々あります。しかし、ドライウエイトを下げるということは、透析で除去する水が多くなることなので患者さんには負担を伴います。ドライウエイトを甘く設定しておいたほうが患者さんにとっては透析中は楽に過ごせるということがよくよくあります。ドライウエイトを下げることで透析中に血圧が下がりやすくなり、脚もつりやすくなり、終わったあとの疲労感も増します。少し透析間体重増が多いだけでこれらの症状は悪化します。透析中にシャントが痛くなる人もおられます。また、そもそも「これ以上痩せたくない」「体重が減るのはいやだ」と思っておられる方はとても多いので、実際には痩せてきたからといっても「ドライウエイトを下げる」という明示的なかたちではっきりと体重の減少を受け入れることを嫌がられるかたは沢山いらっしゃいます。しかし、今はやっぱり下げなくてはいけないと考えたとしましょう。患者さんには、どうして今ドライウエイトを下げなくてはいけないか、下げなかったらどうなるか、下げたことでどういう危険があるかをきちんと説明して納得してもらわなければいけません。説明が正しいからと言って納得してもらえるとは限りません。勝手にドライウエイトを下げて、そのせいで透析がしんどいものになると信頼関係を失ってしまいます。今、巷間には医療関連の情報があふれています。医療情報をとりあげるテレビ番組は軒並み高視聴率になります。その中で薬害がとりあげられることも多く、さまざまな医療過誤、薬害の問題が目に耳に飛び込んできます。そもそも、薬というものは副作用とは表裏一体で漢方薬にしても風邪薬にしても必ずなんらかの有害事象の可能性をはらんでいます。患者さんもお薬の副作用や治療をしたことに起因する悪影響に対しては敏感です。そのようななかですが、薬害を決して起こさない方法は実はとても簡単です。お薬を出さなければいいのです。治療行為をしなければ、それによる過誤を引き起こすことはありません。極端に医療を放棄することはできませんが消極的な医療放棄は結構あります。医療崩壊とまではいかないまでも、救急を断わられたり、適応がないと言われ治療してもらえないこともよくあります。「透析している方は受けられません」と電話口で断わられることは何度も何度も経験します。ドライウエイトだって無理して下げることで血圧が下がる可能性のあるようなことをしないで無難に甘い設定にしておけば波風たたずにすごせます。それでも、自分は理想の医療を追求したいと思えるかどうかが分かれ道です。患者さんに必要なときに必要な薬をずばり適切な量で投与することは医者の技量、経験もさることながら、「何としても良くしたい」という熱意が必要なのです。われわれは透析医療のスペシャリストとして、来ていただいた患者さんには必ず良い治療をします。その熱意を持って日々治療に当たります。できるだけ、その患者さん個人個人に応じて、どこまで良い結果が狙えるか、ドライウエイトを下げられるか、上げられるか。最善の治療は何か?を常に考え、患者さんがより長く、より健康に、より元気にそして若く明るく楽しくなってもらえるように努力を怠りません。








